Preservation Heritage

ゼンマイ:山の生命を「年単位」で保存する

5月の旬を閉じ込め、飢饉に備えるブッシュクラフト的加工法

Osmunda Japonica

Advanced Curing & Fiber Softening

春の山菜の中で、王様とも呼ばれる「ゼンマイ」。5月の深山で収穫したそれは、そのままではアクが強く、保存もききません。しかし、日本の先人が編み出した**「乾燥ゼンマイ」**への加工プロセスを通せば、栄養素を凝縮したまま数年間の保存が可能になります。この労働こそが、冬を越すためのサバイバルの真髄です。

STEP 1:綿取りと下茹で

美しいゼンマイにするための、最初の一歩:

  • 綿取り: くるりと丸まった穂先を覆う茶色の綿を、根元から指で丁寧に取り払います。これが残ると食感が極端に悪くなります(※この綿は「着火剤」として保存可能)。
  • 下茹で: 沸騰したたっぷりのお湯に、重曹を一掴み入れてゼンマイを投入。茎が指で軽く潰れるくらいまで柔らかく茹でます。

STEP 2:乾かしながら「揉む」という魔法

ただ干すだけでは、ゼンマイは「針金」のように硬くなり、戻せなくなります。

むしろ(ござ)の上に広げ、天日に当てます。表面が少し乾いてきたら、**両手で包むようにゴシゴシと力強く揉みます**。これを一日に3〜4回繰り返します。これにより繊維が壊れ、乾燥しても水で戻した時に驚くほど柔らかい「あの食感」が生まれます。

Survival Point: ゼンマイの綿は「究極のティンダー」

捨てられがちなゼンマイの綿ですが、実は油分を含み、火打ち石の火花でも一瞬で着火する「天然の火種」になります。乾燥させて小瓶に入れておきましょう。食料の確保と同時に、火を熾す装備も手に入る。これが自然界との対話です。

Store the Mountain, Fuel the Winter.

May is the month of labor. Every turn of your hands on the drying mat is a promise of warmth and nourishment in the colder days to come.