Thermoregulation Gear

濡れた死神:汗冷えのサバイバル

真夏でも、あなたの服が「氷の膜」に変わる瞬間がある

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Evaporative Heat Loss Vector

Hydrophilic vs Hydrophobic Base-layer Dynamics

「夏に低体温症(凍死)?」 ―― 登山を知らない人には冗談のように聞こえるでしょう。しかし、標高が1000m上がれば気温は6度下がり、風速1mにつき体感温度は1度下がります。そこに「濡れたまま乾かない綿のシャツ」が組み合わさった時、夏山は一瞬にして冬の牙を剥きます。

Physics: なぜ「綿(コットン)」は危険なのか?

綿は吸水性が高い一方で、一度濡れると水を保持し続け、乾燥が極端に遅い素材です。

  • ● 水の熱伝導率: 水は空気の約25倍の速さで熱を伝えます。濡れた服が肌に密着していることは、氷水を直接全身に浴び続けているのと同じ物理現象です。
  • ● 気化熱の強奪: 濡れた服に風が当たると、蒸発する際に身体から凄まじい熱量を奪い去ります。これが「汗冷え」の正体です。
  • ● 体力消耗の加速: 震え(シバリング)によって体温を維持しようとする脳の指令は、あなたの生命維持エネルギーを数時間で枯渇させます。

Strategy: サバイバーが選ぶ「3つの素材」

「水分を移動させ、表面で乾かす」。 ポリエステル等の化繊(ドライ素材)は、水分を繊維に含まず外側へ逃がします。さらに上級者は「メリノウール」を選びます。濡れても繊維内に熱を蓄え、天然の呼吸を行うこの素材は、遭難時の生存確率を最も高める魔法の衣類です。また、網目状の「ポリプロピレン(ドライレイヤー)」を肌に直接着ることで、汗を物理的に肌から遠ざけるテクニックも有効です。

Essential Survival Rule: 乾いた予備を「命」だと思え

ザックの中には、必ず「完全防水の袋(ジップロックなど)」に入れた、乾いた着替え(特にシャツと下着)を1着入れておいてください。雨でずぶ濡れになったり、汗で冷え切った時、その乾いた布きれ一枚が、あなたが生きて明日を迎えるための境界線になります。登山道で綿のTシャツを着て歩くことは、弾丸の入った銃を自分に向けているようなものです。

Stay Dry, Stay Warm. Survive the Peak.

衣服はファッションではない。それはあなたの身体を世界から隔てる「最後の防壁」である。