命の滴定:夏山の水見積もり
あなたの「喉の渇き」が、計画の破綻を告げる最初のアラームだ
500ml
1.5L
予備
Metabolic Fluid Requirement
Mass-Duration Equation for High Heat Ascent
「とりあえずペットボトル一本あればいいだろう」。この安易な判断が、夏山の遭難における「疲労遭難」のトリガーとなります。水分が2%失われるだけで運動能力は著しく低下し、5%で意識障害が始まります。歩き出す前に、あなたの身体というエンジンの燃費(必要量)を計算しましょう。
Equation: 科学的な水分必要量「脱水量の計算式」
登山における水分補給の目安は、以下の一般式で求められます。
体重(kg) × 行動時間(h) × 5 = 必要量(ml)
- ● 例: 60kgの人が6時間歩く場合。 60 × 6 × 5 = 1800ml。約1.8リットルの水分が、生存のために最低限必要です。
- ● 気温による補正: 30度を超える猛暑日や直射日光の稜線では、この1.2倍〜1.5倍を見積もるのが安全圏です。
- ● 予備水(エマージェンシー): 予定ルートを外れたり、道迷いでビバーク(野宿)する場合を想定し、常に「+500ml」を手をつけない予備としてザックの底に忍ばせます。
Tactic: 「水場」を信じないリスクマネジメント
「地図の『水』マークは、枯れている可能性がある」。 夏の後半や日照りが続いた後は、地図上の水場が消滅していることが多々あります。登山口の最新情報や、前日にその道を歩いた人のSNSログを必ずチェックしてください。水が確実でないなら、全行程分を背負って登る覚悟こそがサバイバルです。
Essential Survival Rule: 水だけでは「水中毒」になる
大量の汗と共に失われるのは、水だけではなく電解質(ナトリウム)です。真水だけを大量に飲むと、血中の塩分濃度が下がり、かえって体力を消耗したり足が攣(つ)ったりします。常に塩飴、粉末スポーツドリンク、あるいは少量の食塩を併用してください。身体の中の「塩分濃度」を維持することは、細胞の浸透圧によるサバイバル技術そのものです。
Calculate the Flow, Sustain the Ascent.
持てる水の限界が、あなたの冒険の限界線を定義する。
